“音楽”を橋渡しにいろいろな人と共鳴して、そのつながりを大切にしながら、新しいものやことをつくる活動をされているresonance musicの吉本宏さんと中正美香さんが行った音楽家 田辺玄さんと森ゆにさんへのインタビュー記事が公開されています。
『森ゆに 田辺玄『2020』アルバムについて、おふたりにお話を伺いました。』
-前編-<http://www.resonancemusic.jp/yuni_gen_2020_part1/>
-後編-<http://www.resonancemusic.jp/yuni_gen_2020_part2/>
昨年の暮れにリリースされた『2020』。2020年という年に企画者のBEAU PAYSAGE 岡本英史(ワイン醸造家)さん、そして森ゆにさん、田辺玄さんがどのようなことを考え、この音源ができたのかの経緯が記された素晴らしい記事です。まずは是非ご一読を。
音楽家の2人が気付かせてくれたこと
sonihouseもレコーディングの際にスピーカーを使って頂いたこともあり文中に少し紹介されています。それはとても光栄で画期的かつ重要なことで、また改めてこのことにも言及したいのですが、それとはまた別に僕がこの作品を少し羨ましいと思う点があります。実は少しどころでなく憧れるほどとても羨ましいと思う点があるんです。
それは、現在音楽がオンライン上で広がっていく中、音楽家がリスナーと直接つながる方法を模索する必要があるのではないか、それには改めて地域コミュニティーに根付くことが有効なのかもしれないと気付かせてくれたのが玄さんとゆにさんだったからです。
音楽を無限に探し続けるようなことに疲れた
音楽好きとしての自分は、好みの音楽を見つけるためにストリーミングサービスの膨大なライブラリーを縦横無尽に聴きながら楽しい音楽ライフを過ごしています!と言いたいところですが、音楽を無限に探し続けるようなことにも疲れはじめ、正直手っ取り早くインフルエンサーなどの気になる誰かが作ったプレイリストの中からお気に入りを探すくらいの努力しかできずにいます。
しかし音楽家の立場になれば、この情報の海の中で存在感を持って誰かに音楽を届けるためにどう立ち回るかを考えると、例えばインフルエンサーのプレイリストに入るための傾向と対策を練り、SNSもマメに更新し、映像も作って、配信もして、というような音楽以外への膨大な労力が当たり前に必要になると思います。
小さなコミュニティで存在感を示し必要とされること
しかし、音楽家が自分のジャンルのリスナーのみを想定してどうサバイブしていくかではなく、もう少し足元の環境に目をやれば、音楽家が暮らす地域で「作り手」の一人としてどうあるのかに気を払うべきと気付くかもしれない。料理人でも工芸作家でも職種は違えど、晒される現実は大なり小なり似たような境遇ではないでしょうか。音楽家だけがメディアや流行の隆盛に影響される必要はない。本来「作り手」として、やりたいことがやれるように、その土壌を地域で作りだす。小さなコミュニティで存在感を示し、必要とされながらもその先の世界に届く発信を無理なくつづけることができるのではないでしょうか。
そんな音楽家としての活動を続ける人たちが山梨にいる。それが田辺玄さんと森ゆにさんでした。
小さなコミュニティーの動きがどこでもない山梨独自のカルチャーを作っていく
昨年暮れにそれを象徴する音源が発表されました。それが『2020』です。入手困難でもはや幻のワインと言われるほどの人気を誇る山梨のワイン醸造家 岡本英史さんが営む BEAU PAYSAGE(ボーペイサージュ)が、独自に企画したこの音源。CDなどのフィジカル・メディアは付属せずDL音源のみで、かわりに山梨の作家であるAtelier Yocto(アトリエ ヨクト)さんが作る木のリム皿がパッケージに収まる。山梨に住むワイン醸造家と音楽家、木工作家がコラボレートした作品。
そして地元では彼らを敬愛し活動に賛同するコーヒーロースターやカフェやレストラン、すし屋(!)が積極的に店内のBGMに使い、音源を販売している。みんなが作り手同士、職種の垣根を越えて交流する様子は本当に羨ましい。もちろんそこにはそれぞれの店を愛する常連のお客さんがいて、彼らも自然とその音楽を知り、たまたま店に入ったお客さんも「この音楽なんですか?」というような店主とのやりとりが生まれる。また横つながりからそれぞれのお店も紹介しあう。
こんな小さなコミュニティーの動きがどこでもない山梨独自のカルチャーを作っていくのではないでしょうか。そしてコミュニティーの先にある確かな手触りと手応えを感じることが音楽家として活動することにどれほどの勇気を与えることでしょうか。もちろん玄さんもゆにさんも、もともと山梨だけにとどまらない知名度のある音楽家です。しかしどこかのレーベルに所属するでもなく、長年インディペンデントに自分たちのペースで、心地よい場所で、心地よい人たちと共に表現し続ける姿は清々しくもあり力強く見えます。
願わくば、ここ奈良の地でもそんな独自のカルチャーが育つような環境ができればいいなと憧れの眼差しで山梨のすごい友人たちを眺めています。
sonihouseが昨年お二人にインタビューした記事です。こちらもぜひ。
sonihouse Owners Vol. 02 『田辺玄、森ゆに|前編』
sonihouse Owners Vol. 02 『田辺玄、森ゆに|後編』