シンガポールの音楽レーベルKITCHEN. LABEL15周年のアニバーサリー公演が、6月9日奈良・listudeにて開催されました。
今回はKITCHEN.LABELから、先日新しいアルバムを出した北ドイツの音楽家Tobias Wildenと、レーベルオーナーでもあるシンガポール出身のユニットASPIDISTRAFLYのApril LeeとRicks Angがライブを行い、昼公演、夜公演と多くのお客様を魅了しました。
東京での公演を終えた翌日、奈良へ到着した3人。今回共催であるresonance musicの2人と共に、listudeにやってきました。公演当日は朝から入念なリハーサルが行われ、本番へと整えていきます。
雨もやんだ昼下がり、Tobiasの静かなギターにより開演し、素朴で飾り気のない音たちが、シルクのリボンのように折り重なり、そっと心に沈みこみ、その内省的で寡黙なギターの音色にカタルシスな時間を感じました。
アコースティックギターに加え、クラシックギター、そしてピアノも用い、新しいアルバムや以前の楽曲、さらにはresonance musicが作った北海道のレストランGRISへの1枚『euphoria GRIS』のために書き下ろしたという楽曲も演奏してくれたTobias。大勢のお客様で賑やかだった昼公演を経て、ゆったりとした雰囲気の夜公演では、Tobiasの静謐な世界観もより広がりを見せ、ギターの表情も豊かに響き渡りました。Tobiasのストイックなまでの音楽への飽くなき探求心を魅せられたかと思えば、時折挟まれるMCではシャイで素直な素顔も見え隠れし、その人柄に会場中が夢中になっていく雰囲気を感じました。
休憩を挟んだあとは、KITCHEN.LABELのオーナーでもあるRicksとAprilによるASPIDISTRAFLY。幻想的な音のさざめきと、しっとり響いてくるAprilの歌声からは、たっぷりと空気を含んだ豊かな音色が会場中に広がるのを感じました。2022年に発売された3rdアルバム『After of Dreams』の説明を日本語で(!)話しつつ行われる演奏は、アルバムの世界観をより間近で感じることができ、とても貴重な体験となりました。念入りなリハーサルからは、ASPIDISTRAFLYの世界観をしっかりと捉え、その音作りにこだわっているストイックな音楽性を感じることができ、改めてその姿勢に感銘を受けました。ライブ中は、お客様も時折上を見上げては、音に包まれているとしか感じようのないこの空間を楽しむように、確かめるように、音楽の世界に入り込んでいる様子が感じられました。
最後はTobiasも再登場し、ASPIDISTRAFLY × Tobias Wildenで『LANDSCAPE WITH A FAIRY』を演奏し終演。終演後は、サイン会なども行われ、アーティストとお客様とでにこやかにライブの感想を伝え合うあたたかな時間となりました。
この日も今まで何度となく共にコンサートをつくり上げてきたresonance musicと、この奈良・listudeで一緒にコンサートをつくる最後の日でした。resonance music吉本宏さんの最後の挨拶は、少し切なく寂しい別れの余韻も残しつつ、たくさんの感謝に溢れたとても心温まるスピーチでした。本当に多くの素敵な機会をありがとうございました。