-報告-2014/8/30 音のある芸術祭2014「アートキャンプあみの」evala、鈴木昭男、sonihouseによるサウンドパフォーマンス@[京丹後市]守源旅館

soundpocketが主催する、国内外で活躍するアーティストと香港の若手アーティストがフィールドミュージアムを展開する「音のある芸術祭」。第3回目を迎える今回は、香港と京都京丹後市網野町の二か所での開催となり、sonihouseはサウンドアーティストの鈴木昭男さん、evalaさんとともに滞在制作に参加し、8/30(土)のサウンドパフォーマンスで音響を担当いたしました。



今回の会場は、大正末期からの時の流れがしみこんだ趣のある守源旅館。
こちらの2階にある45畳の大広間に6台の12面体スピーカー”scenery”と2台のサブウーハーをセットしました。


通常のライブであれば会場内に全てのスピーカーをセットしますが、
今回はマルチチャンネルで再生されるevalaさんの音と、昭男さんが演奏する生音の境界がなくなるようなパフォーマンスのため、
観客がスピーカーを意識することのないよう、会場内に2台、廊下に3台、奥の障子の中に1台を配置しました。



会場入りしてから本番までの丸三日、会場は時間に関わらず自由に音出しOKという好条件で、
じっくりと制作とリハーサルを進めることができました。
evalaさんはマルチチャンネル作品のため、会場の中央で音の聴こえ方を確かめながら作業を進めます。
私たちも、本番はどのくらいの人数が入るのか、それによりどの程度吸音されるのか、
またPAブースが廊下にあるため、会場内での聴こえ方をイメージしながら音のバランスを調整していきます。
時間がたっぷりとあったおかげで、evalaさんとじっくりと擦り合せながら感覚をつかむことができました。


ライブ当日、evalaさんもPAブースの隣に移動し、最終の音調整を進めていきます。
本番では障子を全て閉め、evalaさんの姿は見えないのですが、どこからともなく聴こえる電子音、
また同時に昭男さんが楽器を演奏しながら会場内を歩くことで不思議な音場に包まれます。





障子を閉めた状態でevalaさんの音源を流し、全員で移動しながら音の響きをチェックします。
マルチチャンネルでの再生のため、聴く位置によって聴こえ方も違います。


昭男さんはevalaさんの音と空間の空気の動きを確かめるように、ゆっくりとあたりを歩きます。
この間、不思議なことに昭男さんは楽器をもってその音を確かめることは一切なく、
ただ耳を澄ませて集中している様子でした。
evalaさんと昭男さんのコラボレーションは、お互いに事前に決めたことは何もなく、
ただ、そのとき、その場所でどういったものが生まれるかわからない、
まさにサイトスペシフィックなものでした。


昭男さんが空間の音を確かめているうち、開場の時刻となり
少しずつお客さんが集まってきました。
あたりは静かで、すでに何かのパフォーマンスが始まっているような空気が流れます。



マルチチャンネルの作品なので会場にステージはなく、前後左右が決まっていません。
お好きな場所にどうぞ、とのアナウンスで案内されたお客さんは
自然と壁際に沿うように座っていきます。


だんだんと日が暮れ、開演前のお客さんのささやき声が響く中
様々な日用品や小物などがたくさん入ったバケツをもった昭男さんが
少しずつ音を出し始めました。
金属製の定規をカタカタと揺らす音が一定に響き出し、
徐々に観客がその音を拾おうと集中し始めます。


観客の耳が開き始めたタイミングで、evalaさんの音も聴こえだし
ざわめきから開演までが自然につながるようにライブがスタート。
evalaさんの電子音は自然音のようにも聴こえ、昭男さんの出す生音と、また会場周辺の環境音とが混ざり合い
全ての境界がなくなるような音場が広がります。


マルチチャンネルで立体的に再生された電子音、たまに耳元で聴こえる生音、遠くで聴こえる鳥の声、
目を閉じて瞑想に近い状態で聴き入ります。
2時間弱のライブであたりはすっかり暗くなり、最終的には会場内は真っ暗に。
街灯の光で障子の外だけがぼんやりと明るく浮かび上がり、素晴らしく幻想的な時間となりました。
まさにこの場所、この時間にしかなし得ない貴重なライブとなりました。
今回の滞在では、ここ守源旅館をはじめ、地元の方の素敵なおもてなしなどもいただき、
網野の方達の協力的な姿勢に驚くばかりでした。
こればかりはここを拠点にご活躍されている鈴木昭男さんと宮北裕美さんの人徳だなぁ、と実感した次第です。
お越しいただきました皆様、またご一緒した香港のアーティストやスタッフ、地元網野の皆さん、
本当にありがとうございました!
***
また、今回の「音のある芸術祭2014」の様子が香港のフリーマガジンに紹介され、
その中でsonihouseも取りあげていただきました。
香港の皆さまと、またご一緒できる日を楽しみにしております!

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