-報告-【2014/9/3 第1回目】馬木の寺子屋 -真夏の親子課外授業-「聴く」ことにまつわる観察から創造へのワークショップ@[小豆島]馬木地区

2013年に行われた瀬戸内国際芸術祭をきっかけに、芸術やデザインによって持続可能な社会づくりを模索している「小豆島 醤の郷+坂手港」。今年のプログラムのひとつ、「馬木の寺子屋-真夏の親子課外授業-」でsonihouseは音楽の時間を担当、初日の9/3は苗羽小学校の1年生とフィールドワークを行いました。


「馬木の寺子屋-真夏の親子課外授業-」では小豆島だからできる真夏の課外授業を開講し、
自発性のある学びの場をつくります。
まちの方々と恊働しながら、より良い環境づくりや、より豊かな将来を考える思考の種となるよう
6つの時間と放課後レクリエーションを行ないます。
工学・イラスト・民藝などいろいろな授業の中で、sonihouseは「音楽の時間」を担当しました。
5日間のワークショップを通して、普段なにげなく接している音と音楽、目に見えない、触れることができない音に対して、
音を丁寧に聴くことから、音楽を音を通して隅々まで楽しむこと、そして自ら音を発して音楽を作り上げていくことまで、
自らの感性をフルに発揮し、ある時はテクノロジーを通して、
またある時は一流のミュージシャンの技術と感性に直接触れることによって、
どんどん耳の感覚を自由にし繊細に開いていき、音と音楽の楽しみ方を新たに発見する狙いです。

ワークショップ初日は、地元苗羽小学校の1年生を対象とした「みみをすます」授業。
開始のチャイムとともに、筆記用具と水筒を持った一年生が全員集合!
元気いっぱい、みんなもなんだか遠足気分!?


簡単な自己紹介のあと、まず最初に「目」と「耳」の違いについてのお話。
目は閉じることができる(閉じれば何も見えなくなる)けれど、
耳はふさぐことができない(ふさいでも聞こえてしまう)。
普段生活をしている中で、耳は常に開き何かを聴いているけれど、
「意識して」耳をすましてみることで初めて気づく音があることなど、
できるだけ易しい言葉で伝えます。

早速、その場で腰をおろして皆で耳をすませてみます。
「きこえた音をすべて書き出しましょう」。
これは、サウンド・アートの第一人者 R・マリーシェーファーの著作
「サウンド・エデュケーション」からの最初の課題です。
音を、音楽を「聴く」ことは、どれだけ豊かさを含んだ行為なのか。
今回のワークショップが、それに気付くひとつのきっかけになればという想いで早速スタート。


遠くの音、近くの音、自分が出した音、正体のわからない音・・・
毎日通っている学校で初めて気づく音がたくさんありました。

その後、学校を出発し、徒歩10分程の場所にある神社へ。
場所を変えることでどんな違いがあるかな?
途中に聴こえてくる音も意識しながら歩きます。



同じように腰をおろして耳をすませます。
今度は二人一組で目を閉じて、一人が聴こえた音をお友達に伝え、もう一人がそれを代筆。
場所を変えたこと、目を閉じることで、さっきとは違った音にたくさん気づきました。



さっきまでは聴こえた音を文字にしてみたけれど、今度は絵にしてみよう!
まずは画用紙の中央に丸を描きます。この「丸」が自分。
自分を中心に、どんな音がどんな方向からどんな大きさで聴こえてきたかを絵で記録していきます。
まずは先生がお手本を描いて説明します。
カラスの鳴き声は右の頭上から。だけどカラスそのものの絵を描くのではなく、
その「音」の質感、色、形をイメージしながら描きとめます。
それぞれ好きな場所に腰をおろして、「音のスケッチ」スタート!




始まってすぐは、わかっていても、どうしても「そのもの」の絵を描いちゃう。
音から連想する「物」のイメージの強さを再確認。
小学1年生ですら、「音」そのものを純粋に感触として捉えることが難しいのです。

しかし、次第にどんどん感覚的な表現が飛び出します。
「描く」というより「表す」というような感じで、
「絵」に対する意識より「耳」への集中が強くなっていきます。
不思議なことに、女の子よりも男の子の方がその感覚に馴染むのが早く、
より本能的に表現をしているように感じました。
女の子は精神的な成長が早いので、本能的に表現することに対する抵抗や恥ずかしさなどがあるのかもしれません。


完成した絵をみんなで公表!
同じ場所で音を聴いていてもそのスケッチはさまざま。
この年頃は「絵をうまく仕上げたい」という気持ちが邪魔をして
どうしても絵の中にストーリーをもたせてしまったり、聴こえていない絵を描いちゃったり(笑)。
いつもの「○○を描きましょう」という絵の授業とは違った内容に悪戦苦闘しながらも、
自由に感じればいいんだ、ということに気付いてもらえたように思います。
小学校1年生にとって耳で”きく”ことを、
積極的に意味を生成しようとする”聴く”という創造的な行為にまで意識を底上げできるのか?
多少の不安を持ちながら始まったこの試みは、
結果的にわれわれの予想を超える創造力を目の当たりにするワークショップとなりました。
まだ、何にも汚されていない彼らの耳は、集中できる環境さえ促せば、大人より柔らかく、素直でした。





授業の後は、なんと給食までご一緒させていただきました!
緊張して空気がかたくなってしまうのでは…という心配はどこへやら。
みんなから次から次になぞなぞを出題され、とっても賑やかなランチタイムとなりました。
約30年ぶりに食べる給食はなんだか気恥ずかしくも、とっても美味しかったです。


1年生とのワークショップはこの日で終わり。
短い時間でもみんなと有意義に過ごすことができ、私たちにとっても素敵な想い出となりました。
深いご理解とご協力をいただきました苗羽小学校の校長先生をはじめ、貴重な授業時間をいただきました担任の先生、
また関わっていただきました関係者のみなさま、ありがとうございました!
そして2日目へつづく・・・

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