-報告-2015/09/12mama!milk 演奏会「ときのあとさき2015」@[京都]法然院 方丈

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9月中旬の、毎年秋の訪れを知らせてくれる「ときのあとさき」。夕の部 法然院での演奏会に今年も音響で参加させていただきました。環境と演奏の対話によってつくられる、音楽による静かな驚きがそこにはありました。


 
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夏の終わりの法然院。もう街にはいなくなってしまったセミの鳴き声がひびくお昼を過ぎ、
いくらかの涼しさと静けさで満たされたお堂にて、「ときのあとさき」夕の部は開催されます。
 
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17:20。開場してしばらくすると多くのお客さんによって会場が埋まり、
話し声や物音で、にぎやかな空間へと変わってゆきます。
別室に設けられた茶室では graf tea salon によるお茶がふるまわれ、
やさしいほうじ茶の香りが気持ちを整えてくれます。
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開演にさきだった司会によるイベントのごあいさつ・注意事項が話される17:32。
場はゆるやかに落ち着き取り戻し、照明が暗転しmama!milkの2人が登場した頃には
水を打ったような静けさに。
最初の音を出るまでの束の間、舞台にいる2人の動きを一挙手一投足も見逃すまいと
集中力が立ち込める沈黙した会場は、ふすまで隔てられた向こう側からは
誰もいなかったかのように感じたかもしれません。
そして満を持して鳴らされた音・破られた厳かな静寂に、お客さんたちの安堵と若干の興奮を感じとれました。
 
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アコーディオンとコントラバス、それに鹿威しと虫たちの音、風にふかれた木々のざわめき。
あとは言葉にはできない、微細な音が耳に滑りこんできます。
ようやく落ち着いてこの状況をみわたせるようになった18:20。
アコーディオンがときに強く・優しく奏でたり、
コントラバスが弦の響きから指弾きしたりボディを叩いて乾いた音を弾くように、
多くの環境音たちも強弱にグラデーションまでをつけて、まるで呼応しているよう。
鹿威しが不安定な間隔で気の長いリズムを刻むなか、
月と太陽の周期の重なりがみせる、月食や日食のような感動的なタイミングで
音が重なるたびに鳥肌が止まりません。
休憩をはさみ、舞台に向けられた照明が際立ちはじめた18:56。
徐々に妖艶な一面をのぞかせる演奏に、息を呑みます。
照明の光源に目をやると、さっきまで庭に散らばっていた虫たちが集まり
夜の雰囲気がぐっと立ち込めます。夕方からの時間のうつろいに、
夏から秋の一部始終が込められている気さえします。
 
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辺りは真っ暗になった19:30。もう夏の気配は感じない中で演奏されたアンコールは、
秋の足音を感じさせるマーチのような一曲。
季節のバトンを秋に渡し、終えられた演奏会はまたバトンが巡って来年のときのあとさきに続く
布石のような印象を想起してしまいます。
お客さんは帰途につき、バタバタした撤収も終わりかけた20:12。
法然院には、先ほどの驚きに満ちた演奏会などまるでなかったかのような、すました佇まい。
音のかけらも残っていない会場の、舞台に立つmama!milkの残像をつかまえて
しばらく反芻しながら次の夏を待とうと思いました。
 
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