「旅」をテーマに開催されたsonihouse 新スペースこけら落としイベント「家宴-IEUTAGE-」3週目。〈音の部〉にmama!milk、トウヤマタケオ、Takuji。そして〈食の部〉にはFOOD WORKER FUNAKI。sonihouseに馴染みのある、けれど豪華なゲストたちの共演はとても贅沢な一夜となりました。
12月5日、この日の奈良の気温は6℃を切る底冷えの1日になりましたが、sonihouseの新スペースは熱気のある一夜となりました。前日にはmama!milkのお2人とトウヤマタケオさんがリハーサルを行い「旅」の支度を整えるように打ち合わせていきます。mama!milkさんの提案によって実際に2人が旅をした記録、フィールドレコーディングを随所に加えながら演奏を行いsonihouseのスピーカーを使ってできる試みを−−演奏と環境音の溶ける体験をもって「旅」を表現することに。
前々日に入ったばかりのピアノを鳴らしてくれるのはトウヤマタケオさん。かねてから篠山rizmなどでの闊達にピアノを鳴らす姿を見ていたので「このピアノとこの空間でトオヤマさんはどんな音を響かせるのか……」と、弾いてもらうのがとても楽しみでもありました。
今年の1月に奈良たんぽぽの家で開催した「24時間こたつラヂヲ」以来、ほぼ1年ぶりに再会をしたTakujiさん。たんぽぽの家や小豆島の旧醤油会館など、とても思い出深い共演があるTakujiさんにこそ、新しいsonihouseで演奏していただき最も感想を聞きたい方でした。
ほぼ満員となったこの日、2階はここちよい熱気に満たされます。いよいよmama!milkのお2人が登場し、会場は一気に緊張感が高まります。繊細さと荒々しさ、激しさと円かさが同居する1曲目。息を吐くのを忘れるかと思うくらいに緊張し、そしてゆっくり開放されます。一音一音で、ここまで多岐に情感を表現される姿に、−−いつものことながら感動を覚えます。そしてフィールドレコーディングのパート。事前に知っていながらも、その自然な鳴りとそれと共鳴するような演奏に気づかないほどでした。そんな穏やかな環境音から、徐々に迫力を増すフィールドレコーディングのアクセントに驚きつつ、あっという間にカーテンコール。そしてトウヤマタケオさんへ。
「失敗した〜!」と、ピアノを弾きながら朗らかに話すトウヤマさん。参加者の緊張を解きほぐすように笑いを誘います。ときに即興的に激しく、そしておおらかに響きだすピアノ。ひとつひとつの音が丁寧で、歌声に綴られる言葉も、とても丁寧に響きます。安心感、もしくは安堵感に近い感情が訪れ、ふと目をつむりたくなりました。
歌というより、声を一つの楽器として表現するスキャット。Takujiさんのそれは、声の中に多くの物語を感じるような滋味に溢れた豊かさがあります。アコースティックギターとともに言葉にならないその歌声は、言葉よりもはるかに多くのことを雄弁に語っているような印象を受けます。それはもしかしたら「旅」の中で表現される感情や郷里への想いだったかもしれません。
3組の演奏が終わった後の余韻は、まるで旅から帰ってきたかのように、たくさんのイメージが頭のなかできらきらと輝いていました。
そして熱気が引ききらぬ中おまちかねの食の部。FOOD WORKER FUNAKIさんによるひと口大の宝石のようなフィンガーフードのひとつひとつに、「sonihouse」「家宴」の旗があり、このこけら落としを祝って頂くような嬉しい演出です。趣向を凝らした料理たちがひとつの串にまとまり、さまざまな調和を生んでいます。そんな目にもおいしそうな食事はあっという間になくなってしまいましたが、その後も宴の余韻が続く会場で最後まで話題されました。「旅」を続けるアーティストたちによる「家宴」は、こけら落としにふさわしい「門出」でもありました。
今回の写真も、DMのメインビジュアルの撮影者でもある、麥生田 兵吾さんに撮り下ろしていただきました。