-報告- 2025/9/21-22 音欒 -OTOMARU 2025-@[奈良]


『音欒(おとまる)』とは、2022年より始まったlistudeと奈良県宇陀市にあるレストラン・Purjeが共催する音と食の新しいイベント。その場、その時でしか生まれない音や土地の食を通じて、感覚の広がりを体験する内容です。

今年も栗の木の下で無事に再会を果たせた喜びに満ち溢れながら、朗らかにスタートした5回目の音欒。
当日朝の大雨も噓のような秋晴れのなか、夕の欒18名、朝の欒20名、総勢38名の参加者の方とともに秋の宴を楽しむ2日間となりました。



今年のウェルカムスイーツは、Purjeお手製の「イチジクの葉のドーナツ」と冷たい柿の葉茶。ころんと可愛らしいボール型のドーナツと、まだ残暑厳しい中、ひんやりとした柿の葉茶でほっと旅路の疲れも癒されていたのではないでしょうか。集合場所から見える宇陀の秋の風景を眺めながら、はじまりの時を今か今かと待ちわびていました。

「それでは、みなさん。こちらにお集まりください」という案内とともに、「音欒」は静かに始まります。広場で円になり、耳のうしろに手を添え、まずは音を聴く練習から。どんな練習かと言えば、普段何気なく聞いている日常の風景に、耳を傾け、目をつむり、じっくりと聴いてみるだけ。そうすると、とっても不思議なことに今まで見ていなかったちいさな景色たちが途端に聴こえ始めます。いつ体験しても唯一無二の瞬間を感じられる素敵な体験です。





早速そのひらかれた耳で、川の水を聴き比べるワークへと出発。宇陀は昔から水にまつわる土地。山から流れてきた川の、緩急さまざまな音を聴き比べ、感情ではなく知性で音を「観察」します。記号でも、言葉でも、絵でも、記入方法は自由です。みなさん配られたしおりの中に夢中で描いている姿が印象的でした。








描き終えたら、自分が描いたものをシェアする時間へ。同じ音を同じ場所で聴いていたはずなのに、それぞれの視点が入ることで、まったく違う感想に。「それ分かる!」「へえ~、それは思いつかなかったなぁ」など、初対面の方同士、色々な発見が飛び交います。




ワークの最後は、山から流れてきた川とダムから流れてきた川、2つの川が合流する地点で360度自分のまわりの音を観察しました。目をつむり、じっくりと耳に手を当てている方、空を眺めながら集中して聴いている方、みなさんそれぞれの方法で自由に観察し、それをシェア。川の音だけではなく、遠くの鳥の声、近くの虫の音、道路を走る車の音など、日常が耳の中にすうっと入り、自分が透明になっていく感覚。耳はもう完全にひらかれました。










川から出発し、小道を歩くと劒主神社が見えてきます。白い珪石をご神体と祀る神社のあちこちには白い石があり、境内は高い杉の木々に囲まれ荘厳な雰囲気。手水で清め、本殿へと一礼する背筋も自然と伸びてしまいます。



Pujreが用意したドリンクを堪能し、ほっと一息ついている間に、今回のライブパフォーマンスを行う曽我大穂さんが裸足であらわれ、布にかこまれたステージ上で音を奏で始めます。

民族音楽の録音、シンセサイザー、ハーモニカ、朗読、机の上いっぱいに置かれた楽器たちが即興的に縦横無尽にまじわり、気が付くと誰もがその渦の中に巻き込まれていく感覚。ひらかれた耳には、大穂さんの音とともに神社で焚かれる焚火の音、まわりに散らばる自然の音たちが聴こえてきて、まさに今この瞬間を楽しむ音欒の醍醐味がここにありました。



夕、朝と全く違うアプローチでライブを行った大穂さん。<夕の欒>では陽が沈み、刻一刻と暗闇が濃くなっていく様子にあわせるかのように音も大きくなっていき、最後には真っ暗の中轟音を聴くライブを。<朝の欒>では、神社中を白い布で繋ぎ囲い、まるで神聖な結界の中にいるかのよう。どんどん森の中に音が吸い込まれていくかのように静まり返っていき、最後には陽だまりの中かすかな音を聴くライブを。対照的な異なる2つの時間帯を象徴するかのようなライブでした。










どちらのライブでも、最後にはステージ上で積み木を組み立て、いくつものオブジェを作り、木々の中へ音とともに消えていき終演した大穂さんのライブは、聴く人たちの想像力が無限大に広がる、そんな余韻を残した時間でした。








まるで夢の中のようなライブが終わったあとは、隣の社務所にてPurjeによる宴の時間です。今年のメニューは例年とは一味違い、秋を中心とした一年を味わうというコンセプト。たけのこ、かぼちゃ、ゴーヤ、鮎、そして青竹で蒸し焼きにした焼き鳥。ぴかぴかの新米と、よく漬かったぬか漬け、最後にはあたたかいお茶と青梅や集合場所の木から拾った栗を使ったデザートが並び、一年の恵みを存分に堪能することができました。










社務所の外では、Purjeの髙橋さんにより火が焚かれ続け、目の前で青竹の鳥蒸し焼きが出来上がるパフォーマンスを。あつあつの焼き鳥は、志帆さんの可憐な手つきで美味しい焼き鳥へとなっていきます。水道もガスも通っていない原始的なこの神社で、昔から伝わる自然な形で土地の恵みを調理するPurjeの姿は、本来人々が伝えていかなければいけない、大事なことを体現しているようにも見えました。






全身を余すことなく楽しむ宴「音欒」。毎年同じことをしているようで、終えてみれば一度だって同じだと思ったことはありません。一年に一度、秋の始まりに土地を聴き、味わう――「音欒」は特別な秋の一日ですが、ここで感じた土地を聴く、味わうことがだれかの一部になったら素敵だな、と願いを込めてまた来年。

***
「音欒 -OTOMARU- 2025」
2025年9月21日(日)・9月22日(月)

2025年9月21日(日) <夕の欒>(ゆうのまる)15:45 open /16:00 start
15:45 集合・受付
16:00 音のワーク
17:00 ライブ開始
18:00 ライブ終了
18:30 食事開始
20:15 食事終了・終宴

2025年9月22日(月) <朝の欒>(あさのまる)10:45 open /11:00 start
10:45 集合・受付
11:00 音のワーク
12:00 ライブ開始
13:00 ライブ終了
13:30 食事開始
15:15 食事終了・終宴

– 出 演 –
演奏/曽我大穂
食事/Purje
音響/listude

– 撮 影 –
木塚國力
白倉美織

– 場 所 –
奈良・宇陀 宮奥・劒主神社周辺(奈良県宇陀市大宇陀下宮奥318-2)

– 主 催 –
listude(鶴林万平・鶴林安奈)
Purje(高橋亮太・松岡志帆)

– 協 力 –
川原菜緒・木塚國力・白倉美織・西澤一希・廣瀬仁美・古江晃也・山岸祥子・山田偉津子・山田記實
宇陀宮奥地区の住民のみなさま

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