梅雨明け間近となり、夏目前の太陽がまぶしい7月15日、はるばる韓国から10名のチームがlistudeを訪問してくださいました。

チームのうち5名は、韓国の光州にある国立アジア文化殿堂が推進しているACCサウンドラボの研究員。
ACCサウンドラボは、2023年よりその活動を開始し、音を主なプロジェクトとして活用した芸術的表現の研究と、コンテンツ開発を行っています。1年ごとにメンバーは入れ替わりますが、「聴くことの未来(Futures of Listening)」をひとつの共通テーマとして掲げ、技術とともに変化を遂げてきた「聴くこと」の歴史と、広がってきた可能性、そしてこれから私たちが音をどのように認識し、経験していくのかということを探求しています。その他にもその年ごとの小テーマを軸に、研究や作品づくりを行っていきます。
ちなみに今年のテーマは「機械」だそう。研究員の方々は、それぞれ普段はミュージシャンだったり、エンジニアや微生物の研究を行っていたりとさまざまです。



車から降り立ったみなさんから、高くそびえる木とlistudeの建物を見上げ、「Wow…」と驚きの声があがります。
最初は、listudeの敷地のご案内。森のステージを背景に、ここがどんな風にライブで使われたか、またどういう響きかなど、写真と通訳の方を交えながらひとつひとつ説明をしていきます。
外の見学を終えたら、森のホールへ。実際に音楽を聴きながら、listudeのはじまりと経緯、そしてスピーカーの特性について説明と質問を交えながら、お互いの理解を深めていくことができました。


外でライブを行う時の配置のセオリーはあるのか、スピーカーはそもそもなぜ12面体なのかなど。空間やスピーカーのつくりに興味津々の一行は、そのまま製作工房へ。最後は試聴室をご案内し、ホールとはまた違う音の親密な音色に引き込まれている様子でした。



お昼には、listudeで働くスタッフの紹介で、八ヶ岳の野菜を使った色とりどりのお料理が美しいStudio FiGさんのお弁当を。気持ちの良い風に吹かれながら食べるお弁当は、みんなの顔をほころばせ、嬉しいひととき。











午後からは、ゲストにお越しいただいた大磯・SALOの井口寛さんによるフィールドレコーディングの実践講座。listudeに来る前日は、富士山の麓で、東京大学の教授とともに修道の音や樹海の音を聴いてきたというACCチーム。持ち込まれたさまざまなマイクをセッティングし終えたら、listudeの周辺を散策開始。敷地から坂をくだったところに流れている川の音や、工場の音。鳥や虫の声にもじっくりと耳を澄ませ、思い思いの音を録音することができました。



1時間の録音を終え、井口さんの作品やお話を聴きながら、ACCチームが実際に録音した音をlistudeのスピーカーで体験する時間も。
サウンドラボの歩みや今までの作品も聴きながら、話はどんどんアジアや東洋の性質から考える「聴くこと」の解釈や感覚についてのお話へ。
例えば、西洋は建築的にも、石造りの境界やコンサートホールなど、外の自然音を遮断し、聴くことを部分的な感覚として楽しむ場面が多いが、アジアでは昔から虫の音や雨の音など、自然とともに聴いたり、ただ鳴っている音を聴くだけではなく、音と音の間にある静寂や、その場にいる人、空間との関係性の中で聴くという場面が多かったのではないか、という文化的な視点から聴くことについて考えたり。
listudeのスピーカーそのものが、シンプルで静かな日本の職人性を感じる、という今までにない視点からの意見をもらえたりと、環境の違いからその音へのアプローチや考え方が変わってくる、それが国民性へ繋がっていくのではないか、という話へと発展していきました。




井口さんからも、ACCチームへ「なぜフィールドレコーディングをしているのか?」という問いがかけられ、「小さい音や足音など、短く色々録音し、音響的な配置を考えながら録っている、音から象徴的な何か感じ取って捉えている(エンジニア職)」、「自然音を録る時も、植物や動物の音だけではなく、普段は聴こえにくい微生物の音を聴き、関係性をより考えたい(微生物研究員)」、「とかげやカエルの音、水のぶつかる音や鳥のはばたく音など動きがある音を録り、そういったものを表現したい」と語るなど、フィールドレコーディングに対しての各々の見解を自由に嬉しそうに話している姿が印象的でした。
韓国でも、このACCサウンドラボを中心に、フィールドレコーディングがじわじわと人気になりつつあるようです。今回、通訳の方を通じて、音について海外の視点を交えながら、より深く考えることができ、本当に貴重な機会になったなと実感しています。
「今度は韓国でフィールドレコーディング講座をやりたいですね」と笑顔で話していた井口さんも、以前listudeで行ったフィールドレコーディング講座を、最近は全国各地で開催し、その認知度を高めているようです。まだ、参加されていない方も、近くの街で開催されていたら、ぜひ参加してみてください。小さな音に耳を澄ませて聴こえてくる音は、本当は自分自身が探していた音かもしれません。そんなことに、考えを巡らせる日も悪くはないと思います。
また、このような交流会が開催されることを願って。

写真:白倉美織(3枚目~)
listudeのPodcast「No Sound, No Music.」にてACCサウンドラボとの交流会についてお話している会がありますので、そちらもぜひ!