春の訪れを感じ始めた、ひな祭りの日。
大阪・島之内教会にて行われた森ゆに&田辺玄『2020』コンサートの音響を担当いたしました。
(余談ですが、listudeにとって2023年最初の音響現場となりました。)
タイトルのとおり、2020年に山梨のワイナリー・BEAU PAYSAGE岡本英史さんの発案がきっかけとなり制作されたこの作品。
新型ウイルスにより世界が静まり返ったあの時に、森ゆにさん、田辺玄さんの優しい音色は山梨のぶどう畑で静かに生まれ、当時画面越しでしか聴くことのできなかったその音色に、3年の時を経てやっと直接聴く機会に恵まれたことを思うと、とても感慨深くいつにも増して特別な想いが溢れ出るようでした。
19時をすぎたころ、tone chimeが鳴り始め、田辺玄さんが、あとから森ゆにさんが静かにステージへとあらわれます。
教会内に鳴り響く音の粒が、2020年の全てが止まったあの日々に一筋の光をさすように静かに響き渡り、とても素敵なオープニング。
そのままマイクを持たず、歌いだす森ゆにさん。
田辺玄さんのやさしく包み込むようなギターと共にあっという間にその世界に引き込まれます。
今回、森ゆにさん、田辺玄さんお2人での共作は初めてだったという『2020』では、歌詞をつくらず、声を楽器のように使ったというお話もあり、言葉の支配から解き放たれ、広大な野山の中両手を広げて風に吹かれているような気持のよさと、生命が芽吹くような多幸感を感じることができました。
満席となった客席では、ひとりひとりがじっと耳を傾け、各々の『2020』に想いを馳せている姿がとても印象的でした。
この混沌とした世の中で地に足をつけ、一歩一歩誠実に日々を歩んでいく姿が目に浮かぶような、
そんな道を照らしてくれる力強さとあたたかさを携えた音色たちは、心強い味方のように心に沁みわたり、じんわりとあたたかく嬉しい余韻を残し、大阪の夜空へと溶けてゆきました。
2023年も多くの素晴らしい音楽を奏でる現場に出会えますように。
『2020』インタビュー[resonance music]
森ゆにさん・田辺玄さんインタビュー[sonihouse Owners]
主催:resonance music
調律:atelier pianopia
音響:listude