– 報告 – 2022/10/1 音欒 -OTOMARU- vol.1 [奈良]

「音欒(おとまる)」とは、listudeとPurjeが共催する音と食の新しいイベント。
その場、その時でしか生まれない音や土地の食を通じて、感覚の広がりを体験する内容です。

2022年10月1日の爽やかな秋晴れのもと、奈良・宇陀にある白色の珪石を御神体とする「劒主神社」にて初めての音欒が開催されました。

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「音欒」の「欒」という字は「団欒」という言葉に使われ、意味は「もつれて絡み合う、複数の人と人とが和やかな様子」を表します。音楽と食を媒介に繊細な感覚を開き、奈良・宇陀の地の豊穣の季節を祝う場と時間。
いつの季節にも同じものが食べられる現代に、本来暮らしの中にあった秋の収穫への祝祭。
ここに密やかな音と繊細な料理で小さな祝いの場をつくりたいと考えました。
おそらく奈良に都があったよりも以前、古代から祭祀の場であった劒主神社にて遠い過去の人々に思いを馳せつつ、現代の私たちが祝い楽しむ場。それが私たちの考える「音欒」です。
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集合場所である栗の木の下に続々と集まる参加者の方々に、ウェルカムスイーツとして振る舞われた栗のお菓子。そこに立つ栗の木々からPurjeの志帆さんが毎朝、この日のために採ってきたものです。優しい味に気持ちのよい風を感じながら、まだ残暑が厳しい火照ったからだを潤わせ、いよいよ始まる音欒に皆どこか緊張している様子でした。

最初は、listudeによる「土地の音を聴く」体験から始まります。
まずは準備体操から。目をつむり、耳の後ろにそっと手を添えるだけ。
普段聞いているはずなのに聞こえなかったささやかな音が鮮明に耳へと届き、想像力が掻き立てられます。

耳をひらく練習をしたら、いざ実践。
listudeの案内で、近くの小川まで歩きます。枯れ草の上を踏みしめ一列で進む中、少しだけ童心にかえったような気持ちにも。
ほどなくして小川に着き、二手に分かれ流れが強い部分と流れが穏やかな部分とで聴き比べ。
その際に、ただ聴くのではなく言葉や絵などで各々感じたことを記録し、それを同じ場所で聴いていた人たちと発表しあいます。
同じ音を聴いていながら、様々なとらえ方があることを改めて実感すると共に、普段使わない筋肉を使っているようなそんな刺激もあり、大盛り上がり。

全員が聴き終え、いよいよメイン会場である劒主神社へと向かいます。
神社から社の背後の山頂にある白色の巨岩を御神体とする祭祀場であった神社の境内には杉の巨樹が聳え立ち、神秘的な雰囲気が満ち満ちた場所。

喉を潤し、各々神殿を前に神社の好きな場所に腰を落ち着け、ほっと一息。
耳をひらく練習の成果か、葉っぱが風に揺れる音、遠くで鳥の鳴く声など町の何気ない自然の音がより身近に感じられ、身も心もゆっくりと宇陀の空気に馴染んでいっているのが肌で感じられます。

しばらくすると、ゲストである音楽家の内田輝さんが登場し、クラヴィコードとサックスによる演奏が静かに開演。
クラヴィコードは14世紀に考案された鍵盤楽器で、とても小さな繊細な音を奏でます。
内田さんが使用されるクラヴィコードは、全て内田さんの手づくりによるもの。
きめ細やかで美しいクラヴィコードの音色と、ふくよかな豊かさのある暖かいサックス、そして何気ない宇陀の自然の音が入り混じり、その場、その時を全身で感じられるひとときを過ごすことができました。

終演後の余韻冷めやらぬまま、ふと気が付けば音に集中し、驚くほどの体力気力を消耗していたことに気が付きます。
と、そこで神殿の隣にある建物の襖がオープン!

秋の設えが施された会場で、演奏の感想や今日一日の「聴く」体験について語り合いながら、Purjeによるあたたかい祝いの食事によって一日の疲れを癒し満たされ、宴は続いてゆきました・・。

今回の音欒では<朝の欒><夕の欒>と1日2公演を行いました。
お日様の気持ちよさを感じながら楽しむ朝と、夕暮れの中聴く穏やかな夜と、それぞれの美しい光景が心に沁みわたり、忘れられない一日となったように感じています。

また、この「音欒 -OTOMARU- vol.1」の様子をYoutubeでもご覧いただくことができます。
映像作家の片山達貴さんに編集をお願いし、音欒の雰囲気をそのまま感じられる素敵な動画を作っていただきました。
ぜひ、ご覧ください。

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「音欒 -OTOMARU-」vol.1
2022年10月1日(土)
<朝の欒> 9:30 open/10:00 start
<夕の欒> 15:30 open/16:00 start

定員20名/各回
参加費12,000円(食事・ドリンク代含む/当日現金にてお支払い)

– 出 演 –
演奏/内田輝
食事/Purje
音響/listude

– 場 所 –
奈良・宇陀 宮奥・劒主神社周辺(奈良県宇陀市大宇陀下宮奥318-2)
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「音欒 -OTOMARU 2023 初夏-」は、場所やテーマががらりと変わります。
私達にもどんな景色や音が聴こえてくるか、まだまだ想像でしかありません。
みなさまにも、ぜひその”ひととき”を共に感じていただけたら嬉しく思います。

写真:工藤憲二

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