奈良 ギャラリー・ショップ「CALICO : the Bhavan」

若草山の麓、奈良公園の中にある「CALICO:the Bhavan」に12面体スピーカー”scenery”を納入しました。

インドの手仕事の布や、服・生活雑貨をデザイン・販売する「CALICO」は、現地の職人たちと共に、インドの村々で営まれてきた昔ながらの手法にこだわり、カディ(手紡ぎ・手織り綿布)やジャムダニ、カンタ、アジュラック染、原種コットンや羊毛の織りなどの手仕事の布を、現代の伝統として手がけ、未来に伝える活動をされています。


入口の軒瓦から店内へと続くアーシーな内装に、コトグレー仕上げの色味が自然に馴染みます。この樹種は「コト」というアフリカの木で、木の素地の色を一旦脱色してから色を染みこませる「含浸染色」という手法で、イタリアで施しています。表面の着色塗膜の塗装とは違い、木の表情や陰影を残した状態での染色なので角度を変えて見るとまた違った表情があり、CALICOの布の風合ともピッタリ。



今回、スピーカーを納入する大きなきっかけとなったのは、翌日からの展覧会「バンダニ:染め残された旋律」に向けてのこと。バンダニとは日本の絞り染めに似た技法で、染め残った模様はどことなくリズミカル。店主の小林史恵さんは、バンダニの生地から音のはじまりとおわりを滲ませる鐘や、小刻みに空間に轟く太鼓をイメージされ、展覧会中には音が必須だとご相談いただきました。


設置が終わり、試しに史恵さんがインドの作業場で録音してきた音を流すと、その生々しさもあり一瞬にして店内が現地の風景に。足踏み式の織機のリズムと遠くに聴こえる子どもたちの声、現地の温度や光までもが再現されたようでした。展覧会に向け、来日していたバンダニ職人のアブドゥルジャバー・カトリー氏の話し声や、ターメリックの香りとも相まって、視覚以外の感覚によって目の前の現実が揺らぐほど「もっていかれる」感覚となり私たちも驚きました。いくら手仕事だとわかっていても、あまりに細かく美しく仕上がった布を見るとどうしても信じられず、どこか想像しきれていなかったのですが、音が加わるだけでこれほどまでに生々しく実感として伝わるのだ、と改めて体感しました。

単に「良い音を」「よい音楽を」という目的を超え、手仕事を伝えていく「CALICO」の活動に寄り添えたような気がして、甲斐を感じる嬉しい事例となりました。

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