-報告- 2023/11/12 Fabiano do Nascimento Solo concert in Nara

冬の訪れを告げるかのような冷たい秋雨が静かにふる日曜日のお昼すぎ、LA在住のブラジル出身ギタリスト/ファビアーノ・ド・ナシメントの初めての奈良公演が行われました。ステージには3本のギターと共にエフェクターやリズムマシンなど電子楽器が並び、開演前から満席にほど近い会場の熱気は高まります。

リラックスした雰囲気であらわれたファビアーノ。「コンニチハ。」などの日本語も交えつつ、ギターを弾き始めると会場の空気が一瞬にて緊張に包まれます。曖昧なゆらぎを思わせるギターの音色は、例えるならば水面にうつる朝日のきらめきのように、きらきらとたゆたい心地よく鳴り響きます。ルーパーなどの機材を使い、幻想的で美しいメロディーをその場で重ね作り上げていくファビアーノ。片時も目を離せない即興的なパフォーマンスと、滑らかなギターの響きが、遠い海を越え、奈良で今この瞬間に鳴っているんだという貴重さをひしひしと感じさせました。



何より印象的だったのは、ファビアーノの弾く表情。いい演奏だった時、いい音が響いた時、こぼれでるふわっとした微笑み。そこだけ花が咲いたようなその幸せそうな顔に、見ているこちらも思わずつられて微笑んでしまいます。


ファビアーノの卓越したギター技術は、1本のギターから多彩な音色を弾き出し、時には静かで雄大な大地を、時には南米の風が吹き抜けるような爽やかなメロディーを感じさせてくれます。

今回は昼・夜の2公演を行い、たくさんのお客様にお越し頂くことができました。会場内に吊った6台の正12面体無指向性スピーカー”scenery”から響く自然な音色は、ふわりと客席を包み、みな思い思いにその音を楽しむ様子が私達にとっては何より嬉しい光景でした。
昼から夜、クライマックスに向け会場内もだんだんと暗くなり、よりファビアーノの奏でる世界にのめり込めた昼公演。辺りが暗くなり、ステージだけが仄かに明るく幻想的な雰囲気の夜公演。ファビアーノも、昼と夜で少しずつアレンジを加えるなど、2公演それぞれの楽しみ方ができる、贅沢なコンサートになったと思います。



会場ドリンクは、宇陀のレストラン/Purjeが担当してくれ、今回も搾りたてのオレンジジュースや熟れたすだちを使ったお酒など旬の味や、ファビアーノのお気に入りにもなったあたたかくスパイシーなチャイなどで、この素晴らしい音楽にぴったりな幸福感たっぷりのドリンクを提供してくださいました。




最後は、今回このコンサートをlistudeと共催したresonance musicの吉本宏さんが、マイクを手に本日の感謝を伝え、惜しまれつつも終演となりました。



新型ウイルスにより、海外アーティストたちとの交流やコンサート自体が制限されたあの時を経て、またこうして海を越え、素晴らしい音楽を共有できる世界に戻りつつあることに感謝と喜びを感じられたあたたかい夜でした。

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